成年後見制度
認知症・知的、精神障害のある人などが、社会生活において様々な契約・遺産分割などの法律行為をするうえで、判断能力が不十分であるため、自分で行うことが困難なことがあります。
このような判断能力の不十分な人に代わり、家庭裁判所に任命されるなどした後見人が、本人に代わり財産管理や契約などを行うものです。
これまで、判断能力が不十分な人を保護する制度として、「禁治産」、「準禁治産」の制度がありましたが、多くの問題点が指摘され、また高齢化社会を迎え、大幅な改正が行われ、「成年後見制度」が平成12年に発足しました。
制度の概要
成年後見制度には、法定後見制度、任意後見制度の2種類があります。
・法定後見制度
判断能力が衰えた後、家庭裁判所が申立てにより後見人を選任するものです。保護が必要な程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類があります。それぞれに成年後見人・保佐人・補助人が選任されます。
・任意後見制度
まだ判断能力はある人が、将来、判断能力が低下した時に備えて、自ら選任した人(任意後見人、なお任意後見監督人選任前の任意後見人を任意後見受任者といいます)と委任契約を結んでおき、家庭裁判所により任意後見監督人が選任された時点で、その契約が成立するものです。
・特長
後見人の資格 | 後見人の欠格事由(民847)に該当しない限り、誰でもなれます。 ※後見人の欠格事由(民847) 1、未成年者、 2、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人 3、破産者 4、被後見人に対し訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族 5、行方不明者 |
後見人の人数 | 複数選任も可能です。 |
法人も後見人になれますか | 法人も選任できます。 |
成年被後見人になったら戸籍に記載されますか | 戸籍に記載されません。新制度は、後見登記等に関する法律により、成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人であることが、東京法務局の後見登記ファイルに記載され、戸籍には記載されません。 |
申立ては誰がしますか | 本人、配偶者、4親等内の親族等ですが、新制度は、身寄りのない方で、申立人が身近にいない方のために、市町村長に申立権が与えられています。 |
・成年後見人と遺産分割
相続人の中に認知症などで判断能力がない者がいる場合、その人のために、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて成年後見人を選任してもらい、その人が遺産分割協議に参加します。仮に、痴呆状態の本人が自ら遺産分割を行ったときは、成年後見人は遺産分割を取り消すことができます(民9)。
「保佐」・「補助」の場合は、保佐人や補助人が遺産分割協議を代理するには、保佐(補助)開始の審判とは別に代理権を保佐人(補助人)に付与する審判が必要になります。