・相続人が不存在の状態
戸籍上、相続人に該当する者がいない
相続人全員が相続放棄したとき
相続人全員が相続欠格、推定相続人の廃除されたとき
※相続人が行方不明、生死不明の場合は、相続人の不存在ではなく、財産管理は、不在者の財産管理や失踪宣告
により処理します。
全財産が包括遺贈されている場合も、相続人不存在にはあたりません。
・相続人の調査
相続人の調査は、戸籍謄本によって、知ることができますが、被相続人の実子でありながら、他人の子として
届けられている場合のように、戸籍に記載されていなくても、相続人がいるときがあります。
そこで、こうした場合、一定の手続きを経ることで、相続人の不存在を確定し、家庭裁判所は、特別縁故者から
の申立てによって相続財産の全部又は一部を与えることができます。
それでも、残余財産がある場合は、相続財産は国庫に帰属することになります。ただし、その財産が共有財産の
持分であるときは、その持分は、他の共有者に帰属します。
相続人検索により相続人の存在が判明したときは、通常の相続手続きとなります。相続財産管理人がそれまでに
した清算行為の効力は失われません。
・相続人不存在の確定手続き(民951〜959)
@相続財産管理人の選任
利害関係人(債権者、受遺者、特別縁故者など)からの請求により、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任します
利害関係人からの請求がない場合、検察官が請求します。
A相続財産管理人の選任公告
相続財産管理人を選任した旨の家庭裁判所の公告です。期間は、2か月。公告は、官報に掲載されます。
B2か月以内に相続人が現れない場合
管理人は、債権者・受遺者に遅滞なく、2か月以上の期間を定めて債権の申し出をするよう公告します。
知れたる債権者には、各別に債権申出の催告をします。
申出期間が経過後、債権者・受遺者への清算に移ります。
弁済の順位 @優先権を有する債権者 A一般債権者 B受遺者
配当 債権の申出額が、相続財産を上回る場合します。
C2か月以上の債権申出期間内に、相続人が現れない場合
相続人捜索の公告をします。清算と並行し、管理人の請求によって、家庭裁判所は6か月以上の期間を定めて「相
続権主張の催告」をします。
この公告は、管理人又は検察官の請求により家庭裁判所が行います。この公告をするときに、相続財産が全部清算
されているときは、この公告をする必要はないとされます。
清算後、残余財産がある場合は、その後に現れた債権者・受遺者は、この期間内であれば弁済を受けられます。
D6か月以上の公告期間が経過した時
相続人不存在が確定します。
E3か月以内に特別縁故者の申立てに基づき、相続財産の全部又は一部が分与されます。
これにより処分されなかった財産は、国庫に帰属します。
・特別縁故者への財産分与(民958の3)
この制度は、相続人不存在のとき、相続財産を国庫に帰属させるより、相続権はないが、被相続人と特別な縁故に
あった者に、与えることが、被相続人の遺志にもかなうとして、昭和37年改正により新設された制度です。
特別縁故者とされる者
@被相続人と生計を同じくしていた者
A被相続人の療養看護に努めた者
Bその他被相続人と特別の縁故があった者
例、内縁の妻、事実上の養子、法人も可
家庭裁判所が相続財産の分与をするには、特別縁故者からの申立てを要します。分与の有無は、裁判所の裁量です。
この申立ては、最後の相続人検索の公告期間満了後、3か月以内とされます。
特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合、時価が基礎控除額を超えたときは、超えた額につき、相続税が課せら
れます。
・借地借家法36条(居住用建物の賃貸借の承継)
1項 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2項 前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。